それぞれの役割のバランスがとれているとき、問題は深刻にはならない。つまり、片方が夫でいるとき、片方が妻でいられれば、それはそれで互いに安定したペアでいられるはずだ。問題は、夫が男でいるときに、妻のほうが女ではなく母親になっていたり、夫が息子でいるときに、かたや妻が女になっていたりするときだ。そして、なぜか夫婦というのは、すぐにこうしたぐちゃぐちゃの状態に陥ってしまうのだ。本来あるべき姿のペアの軸線が狂ってしまうと、夫婦はぎくしゃくしてくる。それでなくても複雑な関係は、複雑を通り越して、収拾のつかない混沌状態となる。そして、夫婦はため息まじりに呟くのだ。「ああ、どうしてこんなにわかりにくい状態になっちゃったんだろう。もうイヤ」まあ、それが夫婦の夫婦たるゆえんでもあるのだから、ある程度は宿命と思うしかない。しかし、それでもあまりにぐちゃぐちゃになってしまったときは、軸線をそろえるよう努力すべきだ。とくに、男女の関係を維持したいと願うなら、その努力を怠ってはいけない。たとえば、夫が男になっているとき、妻は女になるよう心がけるほうがいい。たとえ、そのとき、母親として忙しくても、主婦としてゴミ捨ての時刻が気になっても、ほんの一瞬でいいから女としての顔を取り戻すようにしたい。これだけでずいぶん違うはずだ。もちろん、妻が女の顔を見せているときには、夫にも男でいるよう努力していただきたい。仕事が気になっていても、「今日、お袋から電話があってさ、明日の休みに顔見せろって言ってたぞ」と伝えたくても、ちょっとの間、会社人間である自分、孝行息子である自分を忘れて、男として妻に接してほしい。