蛍光体の開発

2011.06.16

蛍光体の開発には、カラーテレビの急速な普及に伴って行なわれていた蛍光体の研究がおおいに役立ったのである。ブラウン管型のカラーテレビには、電子線にエネルギーを与えられて赤・緑・青に発光する蛍光体が使われていたからである。美しい光を発するが高価だった希土類元素を利用することが容易になったために、蛍光体技術の進展が加速された面もある。第2次世界大戦後には、元素分析技術や物質を高い純度で分離する技術が発達したため、複雑な化合物として採掘されることの多い希土類元素を単独で供給することが容易になった。また、磁石や第6話でとりあげるレーザーのように、さまざまな希土類元素を用いる製品が開発され、量産されるようになったので、第3話でふれたように、採掘されたものの余ってしまう元素が減ったことも、コスト引き下げに貢献した。1973年にオランダのフィリップス社で開発された「三波長蛍光灯」の効率は90ルーメン/ワットであった。つくりだせる色の自由度も大幅に改善して、ほぼ理想的な白い光を実現できた。三波長蛍光灯には希少な希土類元素が使われているため、原料コストが高く価格も高くなるが、効率がよく、演色性がよく、さらに使用する水銀量も減らすことができるので環境への負荷も相対的に低く、従来のハロリン酸カルシウム系蛍光体を用いた蛍光灯に置き換わりつつある。さらに1980年になって、従来見慣れていた長尺や円形の蛍光灯に加え、白熱電球と同じ形状をもち、同じソケットに直接取りつけられるコンパクトな電球型の蛍光灯がフィリップス社によって開発された。既存の電球用の機器や器具に直接取りつけることができるので、蛍光灯を普及させるためのスイッチングーコストを大幅に下げることができた画期的なアイディアである。電球型蛍光灯は白熱電球よりも消費電力は4分の1になり、寿命が長く、蛍光体の選択によって色温度を自由に設計できるために、白熱電球に置き換わっていくであろう。エジソンがガス灯システムを徹底的に調査し、解析して、白熱電球に取り入れたソケットという工夫は、つぎのイノベーションの蛍光灯にも継承されて、まさにドミナントーデザインとして歴史に残ったのである。